新型コロナウィルス感染症に関して

学校休校とチック症状について
                                           令和2年5月9日
                                           院長 野村芳子
患者さんとご家族へ;
新型コロナ感染蔓延の中で皆様如何お過ごしでしょうか。
お子さん達は休校になってからほぼ50日となりますね。そして多くの所ではこれから更に
3週間以上の休校体制となるようです。大人の方も仕事の面で多くの変化があると思います。
この状況が皆さんの病気にどのような変化をもたらしているか大変心配しております。病気
によっては環境の変化が病状に変化をもたらす可能性がありますが、特にチック症に関しま
して今回の生活状況が病状にどのように影響を与えているか心配しております。
今回は、休校期間(おおよそ二か月間)がチックの症状にどのような変化を与えたかについて
診療の際にお聞きしたことをもとにまとめてみました。

1. チックの変化
運動チック、音声チックがそれぞれ改善・増悪・不変にわけて評価しました。
年齢別(就学前、小学低学年、小学高学年、中学生、高校生)の状況は次の通りです。
① 就学前(対象人数が少ないですが)
   改善:運動チック‐ 43%   増悪:運動チック‐ 29 %
       音声チック‐ 75%       音声チック‐ 25%
② 小学低学年
改善:運動チック‐ 38%    増悪:運動チック‐ 21%
       音声チック‐ 60%       音声チック‐ 20%    
③ 小学高学年
改善:運動チック‐ 52%    増悪:運動チック‐  7%
       音声チック‐ 56%       音声チック‐ 12%      
④ 中学生
改善:運動チック‐ 47%    増悪:運動チック‐  0%
       音声チック‐ 59%       音声チック‐ 12%      
⑤ 高校生
改善:運動チック‐ 40%    増悪:運動チック‐ 60%
       音声チック‐ 17%       音声チック‐ 67%

2.休校による症状変化の評価
(1) 残念ながら、高校生で運動チック、音声チックとも増悪が60%を超えております。
   生活リズム、特に睡眠リズムが崩れているようです。ゲーム等をする時間が
長時間化して就寝時刻が遅くなっていることが主因と思われます。
(2) 小学校高学年及び中学生では増悪が大変少なく、ほぼ半分以上が改善しています。
   ・しっかりとした服薬が出来ている。
   ・保護者の方がゲーム等の時間を上手に管理できている。
   ・早寝早起きが出来ている。
   ・人間関係を含んだ学校生活でのストレスから解放されている。
   等が主因と思われます。
(3) 小学校低学年及び就学前では改善を示しているものの20%を超える増悪ケースが
あることが気がかりです。
  
 学校、幼稚園・保育園といった社会との接点が減少し、閉鎖的な環境に留まらざるをえない
状況が少なからずチックの症状変化に影響を与えていると考えます。
その中で保護者の方々のご努力もあり、規則正しい生活リズムと服薬の継続が保たれること
で症状の改善ケースが多くみられたことに安堵しています。
他方、増悪している患者様においては今一度生活リズムの立て直しに努力していただきたい
と思います。
現在の状況を正しく理解し、家族で話あいながら、我慢し、前向きに生活して下さい。
服薬中の人は怠薬なく、規則正しい生活・睡眠リズム、適度な運動(特に上下肢交互運動)、
そしてゲームをはじめとしたスクリーンタイムの抑制を守って下さい。


以下の4月3日、3月4日の文章もお読みください。

学校休業の再延長で、
チック症状が増悪するのではと心配しています

                                    令和2年4月3日
                                    院長 野村芳子

チック症、トゥレット症候群は小児期に脳神経が適正に発達しないことに起因しています。
他方で、生活環境が病状に影響を与えることが分かっています。
今回の新型コロナウィルス感染症の拡がりは人間社会への大きな挑戦であり、私たちは
勇気と理性をもって立ち向かっていく必要があります。
長期戦が予想される中で生活のリズムが大きく変化していると思います。

特に、子供たちについては、睡眠リズムの乱れ、運動不足、ゲームの長時間化など正常な
心身の発達に悪影響を与えることを危惧しています。

お子様のチック症状が増悪していませんか?
治まっていた症状が再発していませんか?
ADHD(注意欠陥多動性障害)、強迫性障害、ムズムズ足等の症状が増悪していませんか?

保護者の皆様も大変な日々ではありますが、お子様方の小さな変化にも心を配って頂ければ
と思います。
当クリニックではご相談に対応する体制を維持しておりますので、ご心配事を抱え込まずに
お電話ください。

                                    

チック症のお子様をお持ちの保護者の方々への緊急要請
                                                   令和2年3月4日
                                                   院長 野村芳子

新型コロナウィルス感染拡大予防の対策として政府の要請を受けて多くの小中高校が休校
になっています。
小児神経医としてチック症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、睡眠障害等のお子様をお持ち
の保護者の方々へ以下の事項を緊急要請致します。

1. 生活リズムを正しく保つ。
特に睡眠リズムは大切です。
昼夜逆転を起こさぬよう、出来れば夜9時前後には就寝、朝7時前後起床のリズムを
保ってください。

2. 歩行運動の励行。
ウィルス感染対策上人込みを避け、出来れば公園・広場に出かけて両手両足(両上下
肢)をしっかり振って歩かせてください。30分でも1時間でも、日の光を眼を通
して脳に届ける行為は大切です。

3. スクリーンタイムの最小化。
特にスマホやゲームの時間をしっかり管理してください。
チック症、ADHD、睡眠障害等で当院を受診される患者さんの多くがスマホやゲーム
にかなりの時間を費やしています。一日当たり平均で3~4時間、多い子供は6~7時
間もスマホの使用やゲームをしています。殊に休日に増加しています。休校状態の現
在スマホ使用やゲームを筆頭にスクリーンを眺める時間が増えることを強く危惧して
います。
スマホ使用及びゲームは日中に最大で1時間を限度に管理して貰いたいと思います。

感染対策で生活リズムを適正に保つことは簡単ではないと思いますが、チック症等
の症状を悪化させないためにも、以上の留意事項を緊急に要請するものです。

                                                        以上