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「発達障害は脳の問題です」

 

早期の診断と正しい対応が必要です。

本ホームページの「小児神経の病気について」の中にも記してありますが、発達障害

についてここに改めて記します。

1.発達障害とは、行動、コミュニケーション、社会適応などに問題をもつ幼児期から

 小児期の子供に現れる障害です。

2.具体的には自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害 (ADHD)、学習障害

 などです。

 自閉症は、言葉の発達の遅れ、コミュニケーションの障害、対人関係・社会性の障害、

 パターン化した行動、こだわりなどを特徴とし、アスペルガー症候群では基本的には言葉

 の発達の遅れはみられず、コミュニケーションの障害、対人関係・社会性の障害などをみます。

 注意欠陥多動性障害は、集中できない、じっとしていられない、衝動性などを特徴とします。

 学習障害は、全体的な知的発達に比し、読む、書く、計算する等の能力が特に苦手という

 場合を指します。

3.このような発達障害は脳の問題です。それではどのような問題でしょうか。

 自閉症、注意欠陥多動性障害は、ヒトの脳の発達に重要な役割をもつ特定の神経系の問題

 があるといえます。即ち、モノアミン神経系と呼ばれる神経系です。

 この神経系は、乳児期から幼児期、小児期と固有の発達をし、その問題は年齢に依存し、

 特徴的な症状を発現します。

 乳児期からのちょっとした行動、情緒などに関する問題がそれらを示唆することもあります。

 睡眠の問題も少なくありません。

 また、学習障害は、より高次の神経系の発達の問題が示唆されるといえますが、高次の

 脳機能は早期から発達するモノアミン神経系の影響を受けているといえます。

4.発達早期からのちょっとした問題を見逃さず、適切な対応をしていくことにより、問題点を修復し、

 本人の持てる能力、特徴を生かせるようにすることが大切です。

 

当院では、こうした発達障害に対して、保護者から発達過程について詳細を聞き、神経学的検査、

MSPA検査、睡眠リズムの発達などを参考とし、できるだけ早期の診断をし、対応していくことが

大切と考え実践しております。

 

必要以上の心配はせず、しかし、正しく理解していただきたいと思います。

個々の患者さんにベストな対応を考えていきましょう。

昔から、育児の重要性は指摘されております。それに加えて「神経学的育児法(この言葉は私の

恩師、瀬川昌也先生の言葉です)」を個々のお子さんに考えていきたいものです。

 

 

「チック症状を見過ごさないで下さい」

 

チック症はチックを主症状とする神経の病気です。

チックに関連した神経系はヒトの情緒、行動、知性、意志の発達に関連しています。

従って、チック症は不随意運動(自分の意志と関係なく出現する異常な運動)に加えて、

注意欠陥多動障害、強迫性障害(こだわり)、不安症、うつ気分、癇癪、怒り等の

情緒・行動の障害、睡眠障害、ムズムズ足症候群、片頭痛等を伴うことがしばしば

あります。

 

チック症の原因

チック症は発達過程における脳の問題が原因と考えられます。

ドパミン神経系を主として、それに関連した神経系の関与が考えられます。

ヒトの脳(中枢神経)の発達は生来親から受けた素因および環境から受ける因子が関連

しますが、チック症の原因にはその両方が関与しています。

ドパミン神経系は神経伝達物質の一つで、主として運動の調節に関連しています。)

 

早期の受診を

チックがみられたらできるだけ早く小児神経専門の医師の診療を受けることが大切です。

小学校への就学時期ごろに発症するケースが多く、この時期に診療を開始したお子さんの

殆どが快癒しています。

小児期に出たチックの症状を、単なる‘クセ’とか‘心理的なもの’、‘ストレスによるもの’等

として見過ごさないでください。

 

院長の野村芳子は今までに数千名のチック症の診療実績があります。

チック症の疑いのある患者様は当院での受診をお勧めします。

チックは5-6歳で始まることが多く、そのチックについて正しい理解がされないために

学校に行けなくなってしまう場合もあります。

しかし本人、家族、友達、学校の先生等の正しい理解と、専門の小児神経科医の指導、

投薬治療により症状の改善、消失をみ、家庭生活、学校生活の継続、その後社会に出て

それぞれ自分の道を目指し、達成し、社会人として、人と仲良く生きていっている方々が

沢山おられます。

チック症の治療はある程度長期にわたるため、本人の前向きで強い意思と保護者の理解・

協力が必要です。医師との良いコミュニケーションを保って根気強く治療にあたることが

重要になります。
チック・トゥレット症候群の患者さんの多くは、本来大変ユニークな素晴らしい脳を持って

おります。その脳を十分に育て、発揮させるためにも早期にチックの小児神経専門医の

診療を受けることが大切です。

 

なお、当HPの「小児神経の病気について」、「チック・トウレット症候群」もご参照ください。

 

 

「他の小児神経難病」

 

重症筋無力症、ジストニア(瀬川病など)、レット症候群など

院長の野村芳子は小児重症筋無力症、瀬川病に関しては世界的に一番

多くの患者様の診療にあたってきております。

最近、小児重症筋無力症の患者さんの来院が増えております。

早期に正しい診断と適切な治療を開始することにより多くの小児重症筋無力症は

ほぼ完全に治る可能性があります。

また、レット症候群については1980年初頭からオーストリアのレット先生、

スウェーデンのバグベルグ先生、恩師の瀬川昌也先生、諸外国の先生達と

共に研究してきておりわが国では最も多くの患者様の診療に従事しています。

 

その他、頻度が大変多い症例:

睡眠障害、発達障害、てんかんなど

 

 

ご挨拶 -開業8年目に向けて-

 

2022年8月1日当クリニックは開業8年目を迎えます。
お陰様で無事に診療を続けております。
受診していただいた新しい患者さんは、この7年間でほぼ2500人になります。それぞれの
患者さんの病気について正しい診断と対応について、常に初心を忘れずに対応することを
務めてきております。それはニューロン・レベル(神経細胞のレベル)で病気・障害を解
析し正しい対応を考えるということです。
さて、私たちを取り巻く世界・環境の変化は予測をはるかに超えたことといえます。
昨年と一昨年の開業6年、7年のご挨拶にも述べましたコロナ感染症蔓延と小児神経疾患の
関係は改めて多くの問題を突き付けてきております。
スクリーン・タイムの増加、社会環境の変化なども子供の生活を大きく変えているといえ
ます。
また、戦争、温暖化、など世界レベルの問題も私たちの身近なものとなっております。
小児神経学の実践は、人の気持ちを思い、お互いの心を通わせることのできる子供たちを
育てていくことに一石を投じていくことにつながると考えております。
当院の信念であります「世界の平和は子供から」を掲げて、これからも職員一同元気で仕
事に励んでいきたいと思っております。

 

2022年7月15日

野村芳子小児神経学クリニック

院長 野村芳子

 

 

ご挨拶 -開業7年目に向けて-

 

2021年8月1日当クリニックは開院6周年を迎え、7年目にむけて気持ちを新たにしております。

昨年以来の新型コロナ感染症蔓延の事態は、人々および社会に多くの問題を突き付けており、

特に発達過程にある子供たちにはより大きな課題を投げかけています。

振り返れば、40年間私が師と仰ぎ、小児神経の臨床と研究に一生を捧げた故瀬川昌也先生

(2014年12月に閉院した旧「瀬川小児神経学クリニック」院長)であれば、このコロナ禍において

どのような視点で医療にあたられただろうかと日々胸に手をあてています。

私としては、瀬川先生の志しを常に基本として現状を正しく分析し、どのような対応が適切である

かを考え、未来に向けて前向きに行動して参ります。

なお、当クリニックでは職員全員、感染症の予防に細心の注意をしながら、診療を続けております。

 

さて、小児神経が専門とするいくつかの病気についてはこのホームページの“小児神経の病気

について”の項をご参照ください。そのうちのいくつかの病気について、最近の社会状況の中で

繰り返し感じていることを記してみます。

トゥレット症候群は、小児期にしばしばみられる病気で、運動チック、音声チックを主な症状とします

が、加えて多くの情緒、行動、睡眠の問題をみることが少なくありません。チックに関連した神経回路

は発達過程において情緒、行動、睡眠などの基礎にある神経系と関連しているからです。当院では

チック症を主訴とする患者さんに対して上記のような観点からも総合的な診療に当たっております。

また、この病気は環境要因の影響も受けることから患者本人の努力だけでなく、保護者の方々の

ご理解、ご協力が大切になります。

トゥレット症候群は、幼少期に発症するケースが多いのですが、早期からの受診により改善を図る

ことが大切と考えています。

 

発達過程にみられる他の疾患(自閉症、注意欠陥多動障害等)も早期からの対応が望まれます。

私は長年小児期発症の神経・精神疾患の診療にあたってきておりますが、それぞれの疾患の年齢

による変化にも注目してきております。

小児期発症重症筋無力症(MG)、瀬川病、レット症候群等小児期に発症する疾患も、早期の診断、

治療、フォローが大切です。さらに年齢と共に出現・変化する経過に対し、適切な対応を行っていきます。

 

今後も患者さん、その家族の方々と共にそれぞれの問題に向き合っていきたいと思います。

 

2021年8月1日

野村芳子小児神経学クリニック

院長 野村芳子