院長メッセージ

メッセージ 2022年2月

 

コロナ感染症が蔓延し始めて2年となり、多くの面で重大な課題に直面せざるを得ない状況です。

2020年春に、緊急事態宣言の下、チック症に変化はないか検討させていただきました。結果は年齢が

低い子供達ではチックはやや改善、10歳代後期にて増悪の傾向でありました。

生活リズムの変化、屋外活動が少なくなったこと、スクリーン・タイムが増えたことなどがその要因の

一部であることを予測いたしました。年齢が低い子供達で、チックがやや改善したことについては、

家庭内での指導が良く守られていた可能性を考えました。10歳代後期にての増悪については、睡眠

覚醒リズムの乱れが多かったこととの関連を考えました。

前回の調査からほぼ1.5年、さらにいくつかの重要な状況が加わってきているといえます。特に最近

の変異株(オミクロン株)の感染は小児、幼児に拡がり、家庭、保育園、幼稚園、学校に拡がり、学級

閉鎖、学校閉鎖が増加しております。子供たちは自宅での生活が増え、オン・ライン授業、自習など

の状態を余儀なくされております。早寝・早起きのリズムが乱れ、日中の運動などの減少、スクリーン

・タイムの更なる増加となり、それは生活のリズムに対して良くない結果をもたらしていると考えられます。

コロナウィルス感染症が早く落ち着くことは皆の願いですが、そうした中で、子供たちの生活、チック

などの神経疾患の改善にどのような努力をすべきか改めて考えていきたいものです。

さて、小児神経疾患は多種の病気、発達障害などがあります。それらにつき、正しい診断をし、適切

な年齢に適切な対応、治療をしていくことが病気、障害の治療・改善に大切と考えます。

ヒトの脳の発達は胎生期に始まります。胎児期は主として遺伝的に定められた過程に従い、生後は、

遺伝的要素に加え、環境要素が重要となります。この過程に脳幹・中脳アミン系神経系が重要な

役割を持ちます。

脳幹アミン系、特にセロトニン神経系の活性は環境要因に制御され、適切な環境要因が臨界齢

に与えられることが、その正確な発達につながります。これに対し、中脳のドパミン神経系は遺伝的

要因に制御されます。

当クリニックは開院後早くも7年目を迎えております。この間多くの患者さんの診療に努力してきて

おります。例えば、チック症は単に運動チック、音声チックのみでなく注意欠陥多動症候群、強迫性

障害、種々の情緒・行動障害、睡眠障害などを伴うことが少なくありません。

自閉症などの発達障害、レット症候群などは年齢により症状に変化がみられます。てんかんは

完全に治癒するまで辛抱強い治療が欠かせません。

瀬川病、小児重症筋無力症などは治療法がかなり確立しておりますが、長期の経過を専門的に

フォローすることが大切です。

他の神経疾患についても同様な考え方が大切です。とくに小児神経疾患は早期からの適切な

対応・治療が子供の将来に関連してくることが多いといえます。

当クリニックではこのような考えのもとに、一人でも多くの方々に専門性の高い、心を込めた診療

を行っていくことに努めております。

 

2022年2月

院長 野村芳子