英語ディスレクシア

2024年5月10日 金曜日

英語ディスレクシアに関する小児神経学観点からの説明

 

“英語ディスレクシア(英語読み書き障害)”は学習障害の一種です。

チック症、トゥレット症候群、発達障害(注意欠陥多動障害、自閉症、学習障害)は脳の問題

であることはこれまでも述べてきました。

その背景にはモノアミン神経系の関与が考えられます。この神経系は乳児期からそれぞれの

役割を持つと同時に、発達早期から上位の神経系(大脳)にも投射し(枝を伸ばし)将来、視覚、

聴覚などから入ってくる感覚を受け止められるように準備をする役を担っております。

チック症、トゥレット症候群、注意欠陥多動障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、など

の症状はそれぞれ特有の年齢に出現します。

学習障害(読み書き障害)も小学校に入り、読み書きを習う時に明らかになってきます。即ち、

それぞれの役割を担う大脳の発達は乳児期から準備され発達してきておりますが、その部分の

機能が必要となる年齢になり、問題が見つかってくると考えられます。

 

ADHD, ASDの子どもに学習障害が併発することはよく知られております。

モノアミン神経系は素因、環境要因の影響を受けます。また、その発達には“臨界齢”といって、

それぞれの神経が発達する年齢があります。

従いまして、症状改善には投薬、環境要因の調整、教育などが大切です。

また、発達早期からの対応が欠かせません。

チック症、トゥレット症候群、注意欠陥多動障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、

学習障害の対応には、小児神経科の医療と共に、環境要因の調整、育児、教育などが

大切といえます。

  

                           2024/5月 野村芳子

 

 

英語ディスレクシアでお悩みの小児をお持ちの方は一度当院での受診をお勧めします。

瀬川病、他のジストニア

2019年3月26日 火曜日

歩くことが難しい、手が震える、止めようとしても体が動いてしまう、姿勢を保つことが出来ないなどの症状は、異常運動疾患として小児期にも決して少なくありません。

専門的には、その異常運動の原因、種類などにより分類されます。

例えば出生前後の問題により起こる脳性麻痺という言葉は聞いたことがあると思います。脳性麻痺の患者さんも種々の異常運動、姿勢の異常を呈します。

異常運動疾患の中で特に最近注目されているものにジストニアがあります。

ジストニアは目的を持った動きをしようとすると余分な力が入ってしまいその動きが出来ない、また、体幹、下肢、上肢の姿勢が異常になってしまう、また異常な動きが入ってしまうというものです。

ジストニアの原因にも多くのものがあります。

その中の一つであります瀬川病は故瀬川昌也先生が世界で最初に見つけた病気でその治療法、原因遺伝子の発見まで至りました。

症状に朝改善し、夕方から夜に悪くなるという日内変動があり、瀬川先生は当初‘著名な日内変動を呈する遺伝性進行性ジストニア’と呼びましたが、その後世界的によく知られ‘瀬川病’と呼ばれるようになりました

この病気は稀ですが正しい診断を行い、レボドパという薬剤の投与により完全に治すことが出来ます。正しく診断されず、生涯肢体不自由のため施設に入所されている方、下肢の手術を受けている方などもおられます。

瀬川小児神経学クリニックには世界で最も多くの患者さんが瀬川先生の元にこられ、私も一緒に治療・研究に携わってまいりました。

他の原因のジストニアにつきましても多くの経験があります。

これらの異常運動の治療法は最近特に進歩してきております。

重症筋無力症

2019年3月26日 火曜日

瞼が下がることで始まることが多い病気です。斜視、眼の動きが悪くなるということもしばしばみられます。

これらの症状は多くの場合朝改善し、夕方悪くなることが多く、日内変動とよばれます。

臨床型は目の症状のみの‘眼筋型’、呑み込みや呼吸の困難、声が出にくいなどの症状の‘球型’、全身の力が入らないという‘全身型’に分けられます。

この病気は‘自己免疫疾患’の一種で、神経から筋肉への伝達の障害のために力が入らなくなります。

早期に正しい診断と適切な治療を開始することにより多くの小児重症筋無力症はほぼ完全に治すことが出来ます。

この病気は稀な病気ですので診断、治療の経験を持った小児神経科医は多くありません。

この病気は欧米では成人に多い病気ですが、我が国では小児期に発症する患者さんが多いことが1960年代後半に当時東大小児科の故瀬川昌也先生により見つけられ、瀬川先生が瀬川小児神経学クリニックを開院して以後は瀬川小児神経学クリニックに世界でも一番多くの患者さんが治療に来られておりました。

私はその瀬川小児神経学クリニックにて瀬川先生と共にその診療にあたってきており世界的にも一番多くの小児重症筋無力症の治療の経験があります。

レット症候群

2019年3月26日 火曜日

レット症候群は女児のみにみられる特異な発達障害の一種です。

患者さんによりますが、生後1年間位は正常にみえることが多くありますが、1歳前後からそれまでできていた手の機能が失われ、言葉を話し始めていたのに話さなくなったりし、手の異常な動きが始まります。多くの患者さんは這い這いが出来ず、歩行は出来ても体を横に振りながら突っ張ったように歩きます。

手の異常な運動はレット症候群に特有なもので、口の異常運動を伴うことも多くあります。

てんかん発作が出ることも少なくありません。また、息をつめる、ハーハーと過呼吸をする等の呼吸の異常が出現することもあります。

年齢と共に、多くの場合下肢の筋肉の緊張が亢進し、足首が曲がってくることも少なくありません。また、脊柱の彎曲(側彎)が出現することもあります。

知能の発達は残念ながらなかなか難しいことが多いです。

レット症候群の原因は‘メチルCpG結合蛋白2’と言われる蛋白をつくる遺伝子の異常です。‘メチルCpG結合蛋白2’は人の脳の発達と機能の維持に大切な蛋白質です。

根本的な治療法は未だありませんが、正しい診断を早期にして、症状により、てんかんに対する投薬、適切な理学療法、作業療法、言語療法、などを行っていくことにより発達を促していくことが大切です。

この病気をよく知っている小児神経科医の診療が大切です。

全ての症状をなおすという根本的な治療は出来なくとも、適切な対症療法を行っていくことにより子供の長い将来を少しでも良く変えていくことが可能です。

 

私は多くの世界の小児神経科医の中でも最初にレット先生とお会いし、この病気が特異な発達障害であることを故瀬川昌也先生と共に世界で初めて提唱し、その後世界の研究者と共にこの病気の特徴、原因遺伝子についての研究、治療法につきましても研究し、実践してきております。

 

レット先生の言葉に「Care today, Cure tomorrow」(現在はより良く世話をし、対症療法をし、将来の根本的な治療に向けて)という言葉があります。

多くの発達障害の子供たちに大切なメッセージです。

特にレット症候群の患者さんはきっとこのメッセージを受けてくれると思います。

睡眠障害・発達障害

2019年3月26日 火曜日

睡眠障害

睡眠の問題、睡眠障害は近年注目されております。

睡眠障害の国際分類では、1)不眠症、2)睡眠関連呼吸障害、3)過眠症、4)概日リズム睡眠障害、5)睡眠時随伴症、6)睡眠関連運動障害、に分類されます。

一般的には、睡眠・覚醒リズムの問題と睡眠中に起こる異常行動と分けて考えるとわかりやすいと思います。

睡眠・覚醒のリズムの障害には入眠の時間が遅くなること、入眠の時間がだんだん遅くなり、酷くなると昼夜が逆転してしまうこと、昼寝の時間とその長さが年齢に適していないこと、睡眠の時間が長すぎること、夜睡眠中に中途覚醒があることなどがあげられます。

睡眠中の異常行動には子供の場合、夜尿症、夜驚症、寝ぼけ、寝言、夢中遊行、歯ぎしりなどがあります。ムズムズ足症候群、睡眠時無呼吸症候群は小児、成人共にみられ、最近注目されております。最近成人で注目されているものにレム睡眠行動障害があります。

これらの問題の原因は脳と環境要因にあると考えられます。

これらの睡眠障害を正しく診断し、その対応の仕方、治療を行うことが大切です。

これらは睡眠障害の専門医が担当することが大切です。

 

次に睡眠とそのリズムについてお話致します。

睡眠中ヒトの脳はそれぞれの部分が活動しています。また、脳の一部にリズムを形成している神経細胞があり、それは体内時計とよばれ、そのリズムは25-26時間です。即ち地球の自転により決まる24時間のリズムとは1-2時間のギャップがあります。私たちは太陽と共に生活しておりますので体内時計を1-2時間ずつ前にもってきつつ生活しています。即ち、早寝、早起き、規則正しい食事の時間、学校や仕事へ行くことなどが規則正しいリズムの形成には大切です。

睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に分類されます。ノンレム睡眠は浅い睡眠から深い睡眠まで4段階に分けられます。そしてノンレム睡眠によって脳も身体も休んでいます。一方レム睡眠は浅い眠りで脳が活発に動いている睡眠です、人はレム期に夢を見ます。

これらの睡眠が一晩の内に順番に出現することを睡眠構築と言います。即ち、入眠後約一時間半でノンレム睡眠の4段階目の深い眠りからレム期に移行します。このリズムを通常二回繰り返した後にノンレム期が4段階目までの深い眠りに達する前にレム期に移行するサイクルに変わります。また眠りの後半ではレム期の時間が長くなります。よく朝方に夢を見てその内容を覚えていることがありますね。

日中の活動はノンレム睡眠の出現をコントロールします。このため昼間しっかりと活動することが深い睡眠をとる上で大切です。一方レム睡眠は脳の神経細胞によってコントロールされているので日中の活動とは関係なく出現します。

二回の深いノンレム睡眠を確保するためには適切な時刻に眠りにつくことが大変重要になります。例えば夜中の12時に睡眠を始めた場合には4段階目までのノンレム睡眠は一度は訪れますが、夜中の2時ごろに寝始めると一度も深い眠りにつくことが出来なくなる危険性が増します。

昔から子供は夜8時には寝るよう躾けられてきました。然し現代の社会、生活環境ではなかなか実行は難しいですね。然し、小学生くらいまでは少なくとも夜は9時くらいまでには寝たほうが良いと考えます。

 

子供の睡眠を考える上にもう一つ大切なことがあります。

それは睡眠と覚醒のリズムです。

睡眠・覚醒リズムは先ず生後4か月くらいまでは睡眠と覚醒の時間が4時間ほどの周期で交互に訪れ昼と夜の区別がありません。やがて昼間の覚醒時間が増え4か月以降は、夜は通して眠るようになり昼夜の区別が出来てきます。その後も昼間起きている時間が増え日中の睡眠は昼寝の形をとります。即ち、生後7-8か月には昼寝は午前と午後それぞれ1回、になります。昼間起きている時間は更に増え1歳2-3か月には昼寝は午後1回になります。そして4歳頃には昼寝が無くなり成人と同じ睡眠・覚醒リズムをとるようになります。このリズムの形成には昼間の環境要因が欠かせません。即ち、育児、躾、教育、生活習慣の形成などが大切なことと言えます。

太陽と共に生活する事、昼間の活動を高めていくこと、良く歩くこと、運動する事などが子供の脳の発達には大変大切なことなのです。

 

発達障害

お子供さんの発達は親御さんにとり大変大事なことですね

発達とは大きく分けて、運動機能、精神、情緒の発達があります。

これらの発達には本人の脳の機能、環境が大切な役割を成します。

 

最近発達障害という言葉をよく聞きますね。その内容は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害 (ADHD)、学習障害などです。

一般的には行動、コミュニケーション、社会適応などの問題を持つ幼児期から小児期の子供を指します。

お子さんの問題に気付いた親御さんは多くの場合、地域の保健所、かかりつけの小児科医に相談されることが多いと思います。そこで発達障害と診断された場合、療育を勧められることが多いと思います。しかし、実際には療育の場はかなり混んでおり何か月待ちということが多く途方に暮れておられる親御さんが多いと思います。

しかし、それと並行して是非専門の小児神経医の診察を受けて下さい。発達障害は脳の機能的障害とされておりますが、その病態と病因を検討することが必要だからです。

脳の発達には本人が生来持っている脳の機能と様々な環境要因が関連します。これらにつき、専門の小児神経医が診察し、個々のお子さんについて明らかにして、その後の対応の仕方を考えていくことが必要です。

定期的な医師の診療、検査、投薬などを行いつつ、家庭内での育児、指導、療育の場への通所を検討し、本人の脳の発達を最大限に引き出していくことが大切です。

チック・トゥレット症候群

2019年3月26日 火曜日

子供が目をパチパチする、首を動かす、咳払いをする、これらは一般には癖とみなされ、環境、ストレスのせいとされ、放置され、またはカウンセリングにて経過をみられることが多くあります。

しかし、これらはチック症で、その原因は本人の脳にあります。

チックの種類は運動チックと音声チックに分けられ、その持続期間が1年以上になった場合、慢性とされます。チック症は出現するチックの種類とその持続期間から次の4種類に分けられます。

1)一過性小児期チック症:運動チック、音声チックが出現し1年以内に消失する

2)慢性運動チック症:運動チックが変動しつつ、1年以上経過する

3)慢性音声チック症:音声チックが変動しつつ、1年以上経過する

4)トゥレット症候群:音声チックを伴い複数の運動チックが出現し1年以上経過する

即ち、トゥレット症候群はチック症の一型です。

チック症、トゥレット症候群の原因はどのように考えられているのでしょうか。

人の脳の中にドパミン神経系と呼ばれる大事な神経系があります。ドパミンは神経と神経の伝達を司る重要な神経伝達物質の一種で、発達期には大脳の発達にも大切な物質です。チック・トゥレット症候群はこのドパミン神経系の発達の問題がその原因と考えられます。


チック・トゥレット症候群は早期に正しく診断をし、その原因を理解してもらい、その段階により適切な指導、投薬などを行うことにより改善、治癒にもっていくことが可能です。


チックは5-6歳で始まることが多く、そのチックについて正しい理解がされないために学校に行けなくなってしまう場合もあります。しかし本人、家族、友達、学校の先生等の正しい理解と、専門の小児神経科医の指導、投薬治療により症状の改善、消失をみ、家庭生活、学校生活の継続、その後社会に出てそれぞれ自分の道を目指し、達成し、社会人として、人と仲良く生きて行っている方々が沢山おられます。

チック・トゥレット症候群の患者さんの多くは、本来大変ユニークな素晴らしい脳を持っております。その脳を十分に育て、発揮させるためにも早期にチックの小児神経専門医の診療を受けることが大切です。

 

FAQ

Q:チックは病気ですか? 単なるクセですか?

A:チック症はチックを伴う病気です。

  チックはクセではありません。

  チックは無意識に出現する不随意運動で運動チックと音声チックがあります。

 

Q:チック症とトゥレット症候群は違うものですか?

A:トゥレット症候群は音声チックを伴い、複数の運動チックが出現して1年以上

  経過したものを言います。

  すなわちトゥレット症候群はチック症が複雑化・重症化したものです。

 

Q:医者に行かずに様子を見ることではダメですか?

A:チック症は小児期の脳の発達に関係する神経の病気です。

  発達過程は一人ひとり異なるので、自然と治るケースもあります。

  しかし、チックが複雑化、重症化した場合、その治癒には多少の困難が伴います。 

  出来れば症状が軽いうちに早期に診療を始めることがチック症の治癒の上でも、

  また患者本人の精神的安心のためにも有効と考えています。

 

Q:チック症とうつ症状、不登校、ひきこもり等と関係ありますか?

A:チック症は小児期の脳神経の発達異常が原因ですので、精神的な障害を併発

  することがあります。

  チック症が神経疾患である以上、神経学的な治療は絶対に必要です。

  精神療法や行動療法を並行して行うことが有効なお子さんもいますが、神経学的

  な診療なしでチック症が治癒するとは考えていません。

 

Q:発達障害は神経の病気ですか?

A:発達障害の原因は小児期の脳神経の発達不全です。

  チック症の患者さんがADHD(注意欠陥多動障害)、自閉症スペクトラム障害、

  強迫性障害、不安症の症状を出現しているケースが多くみられます。

  小児神経医による治療によって発達障害を改善しているお子さんが多数います。

  就学前の検診等で発達障害を指摘され、療育等をアドバイスされるケースが多い

  ようですが、小児神経医による診療が重要であることを理解してください。

 

Q;発達障害の診断はどのように行いますか?

A:発達障害の診断は、臨床的検査(症状の特徴、年齢による変化、神経学的検査等)

  に加えて、当院で実施するMSPAテスト(発達障害の特性別評価法‐特性の程度と

  要支援度の評価尺度)の結果と提供いただく発達指数/知能指数等の情報をもとに

  行います。

  発達障害にはてんかんを伴うことがあるため脳波検査も実施します。

 

Q:発達障害の治療はどのように行いますか?

 

A:先ずは、発達障害の機序(脳神経系、年齢、環境要因の影響等)について

  親御さんにも十分に理解していただきます。

  人の脳の発達に関係するモノアミン神経に関連した症状には、適切な薬剤

  は有効な場合が多いため、それらを診断の上年齢、症状の度合いに応じて

  適切な分量の薬剤を処方します。

  特にチック、パニック、ADHD、自閉症スペクトラム障害は投薬が有効なことが

  多いです。

  また、環境要因に関しては、医療に加え、家庭、育児・保育・教育、療育の連携

  が大切になります。